皆さんは私塾『クラム』が主催する
『プロの脚本家を目指す旅』
ツアーに申し込みを済まされ、
集合場所の門の前に集まった。

先に来た人もいれば、
後から来る人もいます。
でもとりあえずは自分一人だけ。

まずは旅の行程や
用意する物を教えてくれるだろうと、
手ぶらで参加した人もいます。



門が大きく開いて、
中から添乗員らしい男が現れ、
自分は『塾長』だと名乗ります。

その男の向こうには、
だだっ広い荒野が広がっているだけ。
「なんだこれは?」
と思っていると、
添乗員だと思っていた男は、
「さあ、旅立ちましょう! 後はよろしく!」
と、一枚の略図を渡したきり、
ボーと立っている。

その略図を見ると、
東西南北も距離も表さない、
か細い1本の道が書いてあるだけ。

しかもその道すら、
目の前の荒野には見当たりません。



気付くと回りに仲間が増えている。
中には用意周到、水や食料も用意して、
旅のガイドを片手に、
「私、ドラマ島へ行きたいんですけど」
と言い出す。

と、男が、
「ああ、それならバスがあります。
今なら丁度次の便に間に合いますよ」
と、指差した先にバス停が現れ、
バスも待っている。

「それじゃ、行きましょうか」
男はさっさと何人かの参加者と
バスに乗り込み、行ってしまった。



「取り残されたの……」
と思っていると、
行ってしまった筈の男がまだ立っていて、
相変わらずボーとしている。

何を聞いていいのかも分からず、
「あのー、私、病弱なんですけど、
添乗員さんや皆さんに
ご迷惑をおかけするんじゃないかと
心配しています」
と言ってみる。

するとその男は、
「そうですか。
一応薬は色々用意してますし、
旅の途中に病院や診療所もありますよ」
と応える。

「やっぱり、
水とか食料とか、いりますよね?」

「そうですか。じゃあ、どうぞ」
男は簡単に出して与えてくれる。

「雨が降ったら、傘もいるだろうし、
ぬかるんでいる道だとこの靴じゃ無理ですよね」

男は傘も用意するし、
靴も用意して与えてくれます。

やがて門の下に立ち止まったまま、
そうやってドンドン荷物が増えて行きます。

それでも、やっぱり不安です。
何か忘れ物があるような気がして仕方がない。
このまま旅立つことへの不安がある。

男はただボーと傍らに立っているだけです。
何を訊ねて良いのかも分からなくなってきました。



でも、
男はそうやって見守りながら、こう考えています。

「この人は旅をしたいだけ。
旅の目的も目的地も定まらず、
夢に描いているのは蜃気楼。

ドラマ島もそうだが、
目指す場所に自分の居場所が
あるかも知れないし、ないかも知れない。

そして
皆、最後は自分がこの荒野の中に
新しい道を創り、
新しい都市を創る役目だということを忘れている」

(2001.05.10)